消費を通じて考えるSDGs

ー 第2回 ー

SDGsを語る上で、環境対策は外すことのできない重要な要素であることは、前号で述べたところであり、様々な企業や自治体が環境対策に取り組んでいる。

 

例えば、福岡市ではゴミ処理場で発生した廃熱を発電に利用しており、福岡市西区の総合西市民プールでは温水プールとして廃熱を活用している。こうした取組は、SDGsの掲げる目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」に該当するものと言える。また、市民もこうした施設を活用することで、間接的ではあるがSDGsに取り組むことができる。ちなみに、SDGsの実現に積極的に取り組む都市は内閣府から「SDGs未来都市」として認定を受けることができる。2018年の公募開始から、毎年約30 都市が選定されており、2021年度5月末時点で全国124都市が選定されている。そのうち県内では、北九州市、大牟田市、福津市、宗像市が選定されている。

 

このように現在、多くの企業や自治体がSDGsに取り組んでおり、それを通じてイメージ向上や自社製品への付加価値を図るなどしている。

 

だが、必ずしもその全てが正しいものであるとは限らない。私たちが暮らす社会では、価格競争を通じて安い商品があふれており、多くの消費者は普段からできるだけ安い商品を選んで購入している。しかし、安すぎる商品はその裏側で、途上国の生産者や環境に負担を掛けている可能性があり、私たちの消費がこれを後押ししてしまう場合もある。

 

これに関連したワードとして「SDGsウォッシュ」というものがある。『ごまかしのSDGs』や『みせかけのSDGs』などともいわれ、SDGsの阻害要因ともいえるものである。  例えば、環境負荷が低いことをアピールした商品を販売する企業が一方で従業員を劣悪な環境で働かせているなどといったものである。実例としては中国の新疆ウイグル自治区での強制労働問題が挙げられる。同所では、中国当局が少数民族であるウイグル族を強制収容し、不当な労働を強いて太陽光パネルの部品を製造しているとも言われており、また、製造過程で石炭火力発電の電力を使用しているとも言われている。もし仮に私たち消費者がこういった背景を持つ太陽光パネルを購入し使用したとすると、一見、目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」の達成に近づいているように見えるが、実際は石炭火力発電の更なる稼働を後押ししているだけでなく、目標8「働きがいも経済成長も」の達成からも遠ざかってしまっている。

 

SDGsウォッシュに騙されないようにするため、私たち消費者ができる取り組みとして「エシカル消費(倫理的な消費)」というものがある。エシカル消費とは、消費者それぞれが社会的課題の解決を考慮したり、課題解決に取り組む企業の製品を購入して消費を通じて課題解決を支援したりするものである。しかし、私たち消費者は商品を購入する際、商品棚に置かれた商品を見るだけではその商品の製造過程や背景まで知ることは難しい。そこで目安となるのが、認証マークやラベルである。特に生産者の労働環境などを保証している認証マークとして、フェアトレード認証やレインフォレスト・アライアンス認証などが有名である。

 

こうした認証マークを手がかりに私たちが製品を購入すれば、消費を通じてSDGsに貢献することが可能である。ほかにも、自動車を購入する際に、電気自動車やハイブリッド自動車などのエコカーを購入するといったこともエシカル消費といえるだろう。その中でも特に電気自動車は走行時に排気ガスを出さないため、近年注目を集めている。ただ、ここで注意しなくてはならないのは、電気自動車も走行のために充電した電気が火力発電によって生み出されたものであれば、CO2を排出していることになるということである。また、環境負荷の少ない車だからといって新車を次々に乗り換えていては『エコ』が広告の宣伝文句となり、いたずらに消費を加速させる事になってしまう。

 

消費のあり方については、『世界でもっとも貧しい大統領』として知られるホセ・ムヒカ元ウルグアイ大統領の2012年国連持続可能な開発会議でのスピーチが有名である。

 

「持続可能社会の実現のために解決すべき問題の根本は、大量消費を前提とした社会モデルである。」と指摘した彼のスピーチが、当時、世界中に大きな反響を呼んだことはまだ記憶に新しい。

 

私たちは普段から、流行やトレンドの下で広告等によって購買意欲を刺激され、消費と生産を繰り返して生活している。SDGsの期限である2030年まで10 年を切った今、持続可能な社会を実現するためには、こうした消費のあり方についても見直す必要があるのではないだろうか。

 

文:大井 光太